John Coltrane / Soultrane

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John Coltrane / Soultrane1959年コルトレーンはアトランティックと契約。「ジャイアント・ステップス」においてアイラ・ギトラーが銘々した「シーツ・オブ・サウンド」と呼ばれるコルトレーン独特の奏法の完成を見る。翌年「MY FAVORITE THINGS」において初めてソプラノ・サックスでの演奏を録音。

61年よりインパルスと契約。エリック・ドルフィーを加えたグループでヴィレッジ・ヴァンガードに出演。ドルフィー退団後は有名なコルトレーン・カルテットにより独自の奏法によるモードの探究に励む。64年「史上の愛」によりグループとしての集大成をはかる。

その後は次第にアバンギャルドな演奏に傾き、新しい可能性の追求に向かう。65年コルトレーンの問題作「アセンション」を吹き込む。この間にマッコイ・タイナー、エルビン・ジョーンズが退団する。1966年7月来日コンサートを行う。日本各地ですざましい熱気に充ちたライブを行う。

翌年春の「エクスプレッション」が遺作となる。1967年7月17日肝臓ガンのため死去。

このアルバムはコルトレーンが麻薬と手を断ち切り新たな創造へ向かっていった時の録音です。モンクとの共演で様々な体験を積み、マイルスの元に復帰してモードへの探究を始めたコルトレーンのプレイは56年当時と比べても格段に進歩しています。ただまだ改革の狭間で、モード的なプレイと従来のハードバップ的なプレイが交互に顔を出しています。しかし55年マイルス・クインテットに参加した当時のぶきっちょなプレイではありません。

このアルバムを際だたせているのはコルトレーンがワンホーンでじっくりと吹いていることです。特に2や4はコルトレーンの典型的なバラードプレイが聴かれる点で素晴らしい。また5はコルトレーンの代名詞となった「シーツ・オブ・サウンド」の萌芽がみられます。ものすごく早いパッセージで空間を埋めていくような演奏です。

そしてここで共演しているレッド・ガーランドの存在を忘れることは出来ません。確かにこの時点で二人の目指す物は違ってきています。5におけるガーランドのプレイはコルトレーンのモード的な演奏にとぐわっているようです。しかし微妙な緊張感がこのアルバムを素晴らしいものにしています。特に1や2におけるガーランドのバッキング・ソロは素晴らしいです。ガーランドはよくカクテル・ピアニストなどと揶揄されることもありますが、彼の本質は美しいフレーズと共にあるアーシーさだと思います。コルトレーンの一聴無機質にきこえるプレイがガーランドのフレーズと対比されるとまた別 の趣を帯びてきます。

「グッド・ベイト」で珍しくユーモラスなコルトレーンのプレイが 聴かれる点でこのアルバムの価値があります。写真ではほとんど笑顔をみせないコルトレーンの笑顔が見えるような演奏に感じます。タッド・ダメロン作のこの曲のベスト・プレイではないでしょうか。

コルトレーンはよく同じ曲を何度も何度も吹き込みので有名ですが2の「I WANT TO TALK ABOUT YOU」もその中の一曲です。コルトレーンはノンビブラートで比較的ストレートにメロディを吹きます。バラードにおける典型的なプレイです。その後ガーランドが独特なブロック・コードで弾いた後シングルトーンで実に美しいソロをとります。

コルトレーンのプレスティッジ時代最高のアルバムと僕は確信しています。

John Coltane(ts) Red Garland(p) Paul Chambers(b) Artur Taylor(ds)
recorded 2/7/1958

  1. Good Bait
  2. I Want To Talk About You
  3. You Say You Care
  4. Theme From Ernie
  5. Russian Lullaby


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