Bev Kelly In Person
·ベヴ・ケリーの魅力とは何だろう。はっきり言って歌は上手くないし、声域は狭い。だけど1回聴くと妙に心に残る歌手です。ハスキーで多少ぶっきらぼうな唄い方もこの人の魅力かもしれない。しいて言えばアニタ・オディ系か?。ただベヴ・ケリーは声量もあまりないので、完全にクラブ・シンガーでしょう。小さなクラブで身近に彼女の歌を楽しむのが一番。ただパット・モランと組んだカルテットでの活動を通して彼女のフレージングはかなり器楽的でモダンです。その辺も魅力の一つでしょう。
このアルバムだけど、最初に買ったのは僕が高校生の頃、10代でこんなの聴いていたんだからなにをかいわんやだ。10代のガキにこの歌手の魅力が解るわきゃない、ということでもっぱらポニー・ポインデクスターのアルトに耳がいっていました。ところがポニー・ポインデクスターのアルバムは当時手に入らなかったのでやおらこのレコードを聴いていました。そのうちに「JUST FRIENDS」や「LOVE LETTERS」なんかが好きになりました。何となくモダンなフレージングに心が引かれたのでしょうか、部屋を暗くして小さな明かりだけで聴いていました。変な高校生でした。
このアルバムの魅力はライブしかもクラブでのライブです。ベヴ・ケリーを味わうのに最適なシチュエーション。多分ポニー・ポインデクスター以外のメンバーはレギュラートリオだと思います。録音状態は余りよいとはいえませんが、臨場感はかなり出ています。ベヴ・ケリーのアナウンスも録音されていてクラブの雰囲気が楽しめます。
歌的にはハスキーヴォイスで少しラフに歌いながら、ちょっとブルーで都会的センスな女性の魅力が表現されています。26才とは思えな艶やかな魅力とそしてキュートな雰囲気も醸し出しています。たぶん彼女の声から来るものでしょう。全体的にはミディアム・バウンスの曲が良いです。
1のオープニング、ピアノのイントロ後のベヴ・ケリーの粋な唄い方が素敵です。ピアノソロのあと、かなりフェイクしたフレージングでベヴが歌います。ポインデクスターのオブリガードがカッコイイです。
2のバラード、しっとりとした出だしからベース・ドラムスが加わり、ベヴ・ケリーがモダンな唄い方で盛り上げていきます。
3は有名なスタンダード。バースから始まります。ポニー・ポインデクスターの寄り添うようなオブリガードが美しいです。
4コール・ポーターの有名なナンバー。彼女の得意なジャンプナンバー。投げ捨てるような唄い方がこの曲調にピッタリです。カワイイ。ポニー・ポインデクスターのソロも好調です。
5のバラード、ちょっと力が入りすぎでしょうか?。
6ピアノだけの伴奏で歌った後で出てくる「WE ARE JUST FRIENDS」のフレーズがカッコイイ。こういったテンポの曲は彼女にピッタリですね。崩し方も粋。
7は意表をついた出だしです。ベヴの器楽的なフレージングが逆に成功しています。アニタ・オディ「シングス・ザ・ウイナーズ」のなかの「ボディ・アンド・ソウル」を思い出してしまいました。
8の「LOVE LETTERS」はこのアルバムのベストトラック。ブレイクしたあとの「LOVE LETTERS」の最後のSを伸ばすところにぞっくと来てしまいます。ちょっとラフにサラッと歌ったのが成功でしょう。
9をことさらドラマティックに歌わないのがベヴ・ケリーの魅力。ここでも比較的あっさりと歌っています。
10このようなジャンプナンバーでのベヴ・ケリーの器楽的フレージングはホントにぴたっとはまります。ヘレン・メリルの同曲より好きです。
11ベヴ・ケリーはシャンソンが好きみたいで、ここでもイントロのピアノがシャンソン風です。
場末の小さなクラブでのライブといった感じでお楽しみください。
Bev Kelly(vo) Pony Poindexter(as) Flip Nunez(p) Johnny Allen(b) Tony Johnson(ds)
recorded 10/14/1960
- Long Ago And Far Away
- Then I’ll Be Tired Of You
- My Foolish Heart
- Night And Day
- t Never Entered My Mind
- Just Friends
- Body And Soul
- Love Letters
- This Is Always
- Falling In Love With Love
- My Funny Valentine
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