Shelly Manne & His Men Complete Live At The Black hawk

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Shelly Manne & His Men At The Black Hawk Vol.1ウエスト・コーストを代表する名ドラマー、シェリー・マンの楽しいライブです。

様々なジャズ入門書でのウエスト・コースト・ジャズに対する取り扱いは少なくすみっこに追いやられています。確かに革新的なムーブメントでもなく、現代音楽かぶれな中途半端な作品も見られたましたが、白人たちがグループを通して適度なアレンジメントを施したハイセンスでスマートにスイングする「ウエスト・コースト・ジャズ」もジャズの魅力の一つだと思います。ウエスト・コースト・ジャズから「モダン・ジャズ」と呼ばれるようになったのも納得できます。当時の白人にとって実にモダンな音楽だったのでしょう。

それだけにジャズを聞き始めた頃にこれに接することは少なく、僕もウエスト・コースト・ジャズの魅力を知ったのはだいぶ後になってからです。聞いてみると小気味にスイングするリズムに乗ったジャズは実に心地よいものでした。

その中でハイセンスで音楽的なドラマー、シェリー・マンは文字通りウエスト・コーストをスイングさせました。中には実験的な作品もありましたがシェリー・マンの叩き出すリズムはウエスト・コーストのプレーヤーを鼓舞しました。

彼のドラミングの中でも特にブラッシュ・ワークは特筆に値します。曲のメロディを常に意識した彼のプレイは、ドラムからメロディをたたき出せる男と形容されるほどでありました。彼がバックでざくざくとブラシでリズムを刻むとき言いしれぬくつろぎとスイングが生まれました。

トランペット、テナーサックス+リズムセクションという彼のレギュラーグループ「HIS MEN」はハード・ドライビングな名コンボとして人気を博すと同時に「ウエスト・コースト・ジャズはスイングしない」という誹謗に対する格好の反論となるでしょう。

とにかくシェリー・マンが繰り出すリズムに乗ってメンバー各々のイカスソロが続き、シェリー・マンのちょっとしたおかずもかっこいいです。

さて「HIS MEN」のライブ・アルバムですがいずれも楽しさに満ちた作品です。典型的なバップの編成ながらでてくるサウンドは洗練されていて施されたアレンジもさりげなくまさにモダンなジャズです。

このブラックホークのライブはLPで全部で5枚。CDになってコンプリート版がでました。今回は1集をレコメンドします。なおあとの2-5集も同様に小気味にスイングしています。どれを聴いても満足のいく演奏になっています。

まず言いたいのはアルバムの冒頭の1曲は大事だなあということです。この出だしでアルバムにのめり込めるか否かがかなり決まります。

「SUMMERTIME」が素晴らしい。ベースが絡むトランペットによるレイジーなテーマがかっこいい。僕好みです。ジョー・ゴードンのウォームなトランペットも良いですが、リッチー・カミューカのテナーが素晴らしい。最初の1音でゾクっときます。

彼はアル・コーンやズート・シムスと同じブラザーズサウンドのテナー奏者で、比較的地味な存在ですが、ソロを聴いてもらえばわかるとおりかなりの実力者です。ズート・シムスを思わせるスインガーぶりを見せてくれます。シェリー・マンのブラシもきけます。

2曲目の「OUR DELOGHT」はタッド・ダメロンの有名なオリジナルでバップ時代の名曲。ここでのプレイはバップ時代の騒々しさはなくスマートな演奏です。ここでもリッチー・カミューカのテナーが実に素晴らしい。次から次へと繰り出されるソロがほんとにメロディックです。

テナーの後のジョー・ゴードンのプリティなトランペットも心地よい。彼も残したアルバムが少ないのでここでのプレイは貴重です。

そしてモンティ・バドウィッグの太いベース。僕はこの人がこんなに太いベースだとは思っていませんでした。ボン・ボンとベースがうなります。

それからベース・ソロの前に入るシェリー・マンのドスン一発。これがまたかっこいいです。これを聞き逃さないでください。

3曲目「POINCINANA」ウエスト・コースターはラテンが好きですね。前曲と同じ構成で好調なプレイが続く。この演奏も素晴らしいです。

4曲目「BLUE DANIEL」はトロンボーンの名手フランク・ロソリーノのオリジナルでジャズ・ワルツです。なんといってもジョー・ゴードン。ブッカー・リトルの「BOOKER’S WALTZ」を思わせるブリリアントなトランペットがすごいです。ジョー・ゴードンのベスト・トラック。

5曲目は前曲の別テイクです。これもジョー・ゴードンのトランペットが光ります。

最後はこのグループのテーマで締めくくり。最後のアナウンスもジャズだなあという感じです。

ウエスト・コースト・ジャズってこんなに楽しいジャズなんだということを改めて認識しました。

ライブながら録音も良いです、興味のある方はコンプリート版もお聴きください。

Shelly Manne(ds) Joe Gordon(tp) Richie Kamuca(ts) Victor Feldman(p) Monty Budwig(b)
recorded 9/22-24/1959

  1. Summertime
  2. Our Delight
  3. Poinciana
  4. Blue Daniel
  5. Daniel(alternate take)
  6. Theme : A Gem From Tiffany


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