Paul Quinichette On The Sunny Side

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Paul Quinichette On The Sunny Sideレスター・ヤングにそっくりのプレイスタイルからレスター・ヤングのあだな「プレス(大統領)」にちなんで「バイス・プレス(副大統領)」と呼ばれたポール・クイニシェット。

ただし彼のプレイはどちらかというと全盛期のレスター・ヤングのプレイではなく除隊後のプレイに範をとったために一流とは見なされないままでした。

確かに小型レスター・ヤングの感は否めないものの時によって結構イケルプレイを披露することもあり、完全なスイング系ではなく適度にモダンな味付けをされたプレイはまさしく中間派と呼ぶにふさわしいプレーヤーです。

僕が初めて彼を耳にしたのはデッカ「JAZZ STUDIO 1」というレコードで、その中の「テンダリー」のプレイに聞き惚れました。ミディアム・スローで演奏されるジャムセッション形式の演奏でしたがくつろぎに満ちたプレイが素晴らしかったです。ただそのアルバムの価値はその1曲のみでしたが。しかも後半ドラム・ブレイクの後テンポがアップするとちょっと興ざめでした。

あと忘れられないのがクリフォード・ブラウンがサラ・ヴォーンと共演したエマーシー盤です。その中のポール・クイニシェットのソロが僕の心に残っています。

ポール・クイニシェットに関してはベイシー一党と録音したドーン盤「キッド・フロム・デンバー」が有名です。2年間在籍したベイシー楽団の同僚たちと繰り広げたジャムは腕達者が揃ったおかげで愉しい中間派セッションでした。

僕がポール・クイニシェットに求めるのはバラードを吹いたときのくつろぎのあるプレイです。アップテンポでは少々荒い演奏になることもあります。これも後期レスター・ヤングの悪いところをまねしたせいかもしれめせんね。

その点ミディアム以下でのプレイには余裕がありリラックスしたソロは中間派の好ましい点です。

さてこのアルバムですがプレスティッジお得意のモダン派のミュージシャンによるジャムセッション。その中ではポール・クイニシェットが加わった点で異色作です。

おもしろいのはポール・クイニシェットが加わった事でスイングでもハードバップでもない不思議な味わいになるところです。

このセッションに参加したミュージシャンはポール・クイニシェットをのぞけば当時ばりばりの若手ばかりです。特にカーティス・フラーとソニー・レッドはデトロイトからNYへでてきたばかり、またジョン・ジェンキンスもシカゴからでてきたばかりの新人です。

この録音の翌日カーティス・フラーとソニー・レッドの二人でプレスティッジにアルバムを吹き込んでいます。それもばりばりのハードバップ。これを見るとプロデューサーのボブ・ワインストックが二人に肩慣らしでもさせたかのように感じます。なぜポール・クイニシェットなのかその理由はわかりませんが先輩に敬意を表しながら張り切ってプレイしているのがよくわかります。

1曲目のプレイはなんかちょっとちぐはぐな感じを受けます。まだ若手とポール・クイニシェットがかみ合わないようですね。

2曲目、ソニー・レッドの若さ溢れるソロが素晴らしい。その後ポール・クイニシェットがソロをとりますが、アンサンブルがいきなり古風になるのがおもしろい。ただポール・クイニシェットが一生懸命モダンなソロをとろうとしているのがよくわかります。それがまたこの曲では上手く作用していて、カーティス・フラーのほんわかとしたプレイもグッドです。

3曲目この曲をスローでプレイしたのは初めて聴いた。やはりこういった演奏になるとポール・クイニシェットが素晴らしい。若手には出せないいい味を出しています。出だしのズ・ズ・ズで「やったー!」って感じです。しかもタイトルに引っかけてこの曲を演奏するなんて粋ですね。

4曲目のラテンナンバー。あっけらかんとしたテーマからソロになるとそれぞれがいいソロをとります。実に愉しげな演奏です。19分という時間が長く感じられません。ソロについては4ビートになってからの方が良いと思います。ソロはレッド・フラー・クイニシェット・ジェンキンス・ウォルドロンの順。クイニシェットもミストーンはあるものの彼にしてはモダンながら愉しいプレイを聴かせてくれます。ジェンキンスはまるでジャッキー・マクリーンうり二つのプレイです。

最後のバラードはリハーサルだったのでしょうか。ポール抜きの演奏です。

はっきり言って3星クラスの演奏ですが「こんなアルバムもあったな」って思い出していただければうれしい1枚です。

Paul Quinichette(ts) Curtis Fuller(tb) John Jenkins(as) Sonny Red(as) Mal Waldron(p) Doug Watkins(b) Ed Thigpen(ds)
recorded 5/10/1957

  1. Blue Dots
  2. Circles
  3. On The Sunny Side Of The Stree
  4. Cool-Lypso
  5. My Funny Valentine

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