Stan Getz / My Old Flame

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Stan Getz / My Old Flame1981年サンフランシスコ・キーストーンコーナーでのライブアルバムをカプリングした2枚組CDです。

スタン・ゲッツ(ts)1927年ペンシルバニア州フィラデルフィア生まれ。
1947~49年在籍したウディ・ハーマン楽団セカンド・ハードでの「サマーシークエンス第4部」「アーリー・オータム」のソロで注目を浴びる。クールジャズを代表するテナーマンとしてプレスティッジ等に録音。スカンジナビアで当地のジャズメンと録音した「ディア・オールド・ストックホルム」はクールジャズの名演のひとつ。以後自己のグループで活動。54年以降一時麻薬のためシーンから引退。この頃拳銃強盗騒ぎを引き起こす。すぐカムバック。ヴァーヴに吹き込みをはじめる。62年よりはじめたボサノバが大ヒットをとばす。以後は若手を登用しながら順調な音楽活動を行う。72年以降は悠々自適の音楽活動。1991年6月6日ガンのため死去。

スタン・ゲッツ、彼の人間性は別 にしてジャズ界を代表するインプロバイザーの一人です。ウディ・ハーマン楽団セカンド・ハードにおけるフォー・ブラザーズの一員として残したソロや独立後自己のグループで録音したプレスティッジやロイヤル・ルーストのアルバムは好例です。50年代半ばよりヴァーヴと契約しアルバムをリリース。その頃より次第にハード・ドライビングなソロとなっていきます。

その後一時ヨーロッパでの活動を経て62年に発売されたボサノバによるアルバムによってスタン・ゲッツは一躍スターダムにのし上がるわけですが、ボサノバのクールなイメージとスタン・ゲッツのサウンドはベスト・マッチでした。スタン・ゲッツのクールネスとボサノバの都会的なイメージは新鮮な響きを与えてくれました。この後様々なミュージシャンが同様の企画でアルバムをリリースしたことでもその影響力がわかります。

ゲッツはボサノバのあとも当時の若手を起用して素晴らしいアルバム残しています。「スイート・レイン」はその代表的なアルバムです。その後もミロスラフ・ヴィトウスやスタンリー・クラークを起用しています。チック・コリアのヒット作「リターン・トゥ・フォエヴァー」もゲッツとの共演が下敷きにあったのではとはと。

僕もゲッツ入門は「ゲッツ/ジルベルト」でした。ゲッツのトーンは50年代前半と比べるとヘビーな音色に変わっていますが、ジョビンやジルベルトの音と組合わさると都会的でクールなイカス音楽となりました。僕もこれでボサノバの虜になりました。

僕の場合はゲッツの足跡を62年から逆にたどって聴きました。次に聴いたのがヴァーヴ時代の「ジャズ・ジャイアンツ58」木の葉の子守歌が絶妙でした。それから「オペラ・ハウス」「ウエスト・コースト・ジャズ」などを聴き、やっとクール時代のゲッツにたどり着きます。そのあと「スイート・レイン」などを聴いたのですが、これを境に何故かゲッツの新作をあまり聴かなくなってしまいました。

だいぶ後になってゲッツのラスト・レコーディングとなったケニー・バロンとのデュオのコンサートの凄絶なプレイを聴いて再びゲッツを聴くようになります。特に80年から最後の10年間はゲッツ第2の黄金期とも呼べるほど密度の濃い素晴らしい作品が数多くリリースされています。近年発掘された未発表ライブなど素晴らしい演奏が目白押しです。僕自身改めてゲッツが偉大なインプロバイザーということを認識させられました。

ぼくはコンコードのこのアルバムは発売時点で聴いていませんでした。いまさらゲッツという思いもあり、他の再発ものばかりを買っていました。コンコードからCD化されたときも素通 り。ところがある時地元のジャズ喫茶でゲッツを何となくリクエストしたところマスターが例のラスト・ライブをかけてくれたのです。僕はビックリしてしまいました。日本でろくなコンサートもしないという偏見もあって後期のゲッツは聴いていなかったのですが、死を予感したゲッツの入神のプレイがスピーカーから飛び出してきました。それからはゲッツの未発表アルバムが出るたびに聴くことになります。「BUT BEAUTIFUL/BILL EVANS TRIO FEATURING STAN GETZ」もそうした1枚です。

そんなこともありこのアルバムが2枚組として再発された時、僕はすぐさまこのアルバムを聴きました。プレイ・ボタンを押した瞬間からこのライブに没頭しました。演奏曲目はすべて周知のスタンダード。リズム・セクションに手練れを揃えて素晴らしいユニットです。ゲッツも心ゆくまでプレイを楽しんでいるのが良くわかります。最晩年のすさまじいほどの研ぎすまされた感じはありませんが、実にリラックスした暖かい演奏になっています。

ゲッツ自身何回プレイしたか解らないくらい演奏したはずの曲をいともあっさり上手く料理してしまいます。観客の歓声がその時のライブの素晴らしさを物語っています。

CD1に「THE DOLPHIN」、CD2に「SPRING IS HERE」を収録。内容に大差はないのでお好きな面 から聴いて欲しい。アップテンポのスインギーなソロ、バラードのジェントルなソロ、80年代スタン・ゲッツの素晴らしさを満喫していただけると思います。興味のある方は是非アナログで聴いてみてください。

Stan Getz(ts) Loe Levy(p) Monty Budwig(b) Victor Lewis(ds)
recorded 5/1981

CD1(THE DOLPHIN)

  1. The Dolphin
  2. A Time For Love
  3. Joy Spring
  4. My Old Flame
  5. The Night Has A Thousand Eyes
  6. Close Enough For Love

CD2(SPRING IS HERE)

  1. How About You
  2. You’re Blase
  3. Easy Living
  4. Sweet Lorraine
  5. Old Devil Moon
  6. I’m Old Fashioned
  7. Spring Is Here


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