Wynton Kelly / Kelly At Midnight
·ウイントン・ケリーのピアノ・トリオの代表作の一つです。
ウイントン・ケリーの楽歴は古く50年代はじめ19歳の時に初リーダーアルバムをブルー・ノートに吹き込んでいます。しかし彼の存在が本格的に認められるようになったのはダイナ・ワシントンのバックを務め、ディジー・ガレスピーのビッグ・バンドに起用された頃からでした。そして1959年から63年まで在籍したマイルスのグループでのプレイでその地位を不動のものとしました。
ウイントン・ケリーのプレイはころころと転がるようなソロから「ケリー節」と呼ばれ多くのジャズ・ファンに愛されています。とにかくハッピーにスイングしていくソロは聴いていて気持ちが良いものです。でもバラードなどにみせるちょっとした愁いも彼の魅力ではないでしょうか。
このアルバムはドラムのフィリー・ジョー・ジョーンズと共演した唯一の公式のピアノ・トリオ・アルバムとしても貴重です。
50年代のマイルスのリズムセクションはレッド・ガーランド、ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズの3人によるものが一番有名で「ザ・リズムセクション」なる尊称で呼ばれました。
ウイントン・ケリーが参加した時にはドラムはジミー・コブに変わっていてマイルス・コンボでのフィリー・ジョー・ジョーンズとの共演はなく、この3人によるヴィー・ジェイのセッションは実に貴重なものです。
しかも3人ともその最盛期での録音であり全ピアノ・トリオ・アルバムの中でも最も人気のあるアルバムの一つです。
ウイントン・ケリー自身もマイルスのコンボの重要なメンバーとしてマイルスの信頼を得ていた時期だけにピアノの切れ味も抜群です。ファンキーなウイントン・ケリーを存分に味わえます。
ただこのアルバム、発売当時なぜかダウンビートの評価は良くないものだったそうです。それはフィリー・ジョー・ジョーンズのドラムにあったようですが、あらためて聴いてみても逆にフィリー・ジョー・ジョーンズのドラムがこのアルバムの聞き所になっているような気がします。しかも3人が対等の立場で協調したピアノ・トリオとしても特筆に値するアルバムだと思います。
曲目はすべてミディアムからミディアム・スイング、ウイントン・ケリーの一番得意とするテンポで「ケリー節」が炸裂します。ポール・チェンバースのソロも存分に聴かれ、フィリー・ジョー・ジョーンズのドラムがかなりのスポットを浴びています。
このところがダウンビートの評論でトリオ全体のデリカシーを損ねているとの評価をもらった点ですが、僕はフィリー・ジョーのドラムがメンバーの気持ちをより盛り上げているように聞こえます。
なにはともあれメンバー全員が最高の時の黄金のピアノトリオをぜひ聴いてください。
WYNTON KELLY(p) PAUL CHAMBERS(b) PHILLY JOE JONES(ds)
recorded at N.Y.C. April 27,1960
- TEMPERANCE
- WEIRD LULLABY
- ON STAGE
- SKATIN’
- POT LUCK
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